これは
の続きです。
ξ
今年就職した甥っ子から、初めての給料で日頃世話になっている親戚を食事に招待したいと殊勝な申し出があったのだが、日程が合わないでいるうちに、東京は唖然とする酷暑になってしまい、集まりやすい時季が来たらと先送りになったままでいる。
昔のように、辞令が出るまでどの部署に配属されどんな仕事をするのかハラハラドキドキ緊張して待つようなことは全くなく、それなりの期間インターンシップ(アルバイトか?)をしていたようで業務の見当はついているとのことだった。
物価と賃金が上がり、長く染みついた停滞の空気が変わり始めた。
今春の賃上げ率は平均5.1%と33年ぶりの高さとなった。
企業業績や設備投資計画は過去最高の水準にある。
この先の注目は力強さを欠く個人消費への波及だ。・・・
「3年目でこんなにもらっていいのか」。ダイキン工業に勤める男性(24)は給与明細をみて驚いた。
初任給は20万円台前半だったのに、30万円の大台を超えた。
(2024.7.30)「3年目でこんな高給 ?」 デフレ離れの若者 二極化する消費
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA038LF0T00C24A7000000/?n_cid=DSPRM1MAML01_ANNPU
こういう記事は、いい話である。
企業業績増、設備投資増などの変わり目にあって物価や賃金が上がり、ながく若年層に染みついたデフレ停滞の空気も変わり始めた、という内容である。
消費性向などの差は、日本では、賃金の高い中堅エリート層や、コツコツ資産を増やしてきた高齢者層、所有不動産や株式の値上がりによりプラスの資産効果を受ける資産家層といった経済的上層と、それらに無縁の下層とのあいだの問題と思われがちであるが
若年層も、新卒不足の時代、賃上げ率が中高年層よりずっと大きくなっており、その結果、彼らの消費も活発化し、デフレ離れが進んでいるようなのである。
この結果、若年層の消費の動向も、当然、二極化してしまう。
先進国間で何十年も見劣りしていた日本の賃金がようやく上昇期にきたのであれば、その所得格差は拡大するほかない時期に入っていく。*1
このとき経済的上層は、物質的な生産・消費を動かしていくばかりでなく、エンターテインメントや思想の生産・消費つまり文化の生産と消費においても必ず主人公になっていく。
これは生産と消費で発展していく経済社会では避けられないことである。*2
(偉大な足跡を残した思想家マルクスやエンゲルスは、生家は富豪でありプロレタリアート出自ではない。)
ξ
社会的下層は非エリート層、上層はエリート層と見なしやすい。
トランプ旋風は、「反知性主義」の来襲のように言われたが、その実態は「なにかといえば知性を優先することへの嫌悪」もしくは「反エリート主義、エリート層への反感」に過ぎなかった。
逆にエリート層からみれば彼らの多くは
知的・合理的に考えられない、知識とか見識に関心がない、正しいことを実行する気がない、つまり教養も学歴もない、カネモチ(≒エリート層)を嫌悪する貧乏人であり、薬物やアルコールに溺れる意志薄弱な人々である。
つまり双方にとって、共通言語を見出せない、理解・説得不能な別世界の人々といえる。
だからどんなに事実と論理の言葉を駆使しても、せいぜい<炎上>騒ぎまで、相互理解に落ち着くには至らない。
だから経済学者ポール・クルーグマンらのように
「トランプ支持者は、基本的に人種差別主義者で偏見に満ちた田舎者であり、共和党が何十年もこっそり餌を与えてきたが、いまや檻から出てきたのだ」
と言い放ってみたくもなるだろう。
ξ
この社会的下層の anger(怒り) and mourning(嘆き)を利用することで社会的に上昇しようとする利益集団(概してポピュリストと呼ばれる)が大きなアイデンティティを形成していく。
一方、社会的上層は、政治も経済も思想・文化も自分たちで担っていかなければならないと自覚するエリートからなる集団がアイデンティティを形成する。
こうして融合しないメガ・アイデンティティはどちらが主流となり、どちらが傍流となるのか。
これは現在の大統領選挙戦をみていると、とにかく過半数の支持を得てしまえばよい、つまり多数決以外に決まらない、多数決で政治も経済も思想・文化も主導権を取るしかない、と考えられているように強く思える。
これは日本でもおそらく同様であり、今後、社会的下層の漠然とした anger and mourning を利用した反エリート主義・ポピュリスト集団と、政治や経済や思想・文化の主人公であり続けようとするエリート集団との対立が顕著になっていくと思える。
(悪くすれば、互いにバカ呼ばわりするだけの不毛の対立になる)
ウヨクだのサヨクだのという旧来の対立区分は、極右・極左・右派・左派とレッテルを貼られたりしながら、上記対立のなかに埋没してしまうだろうと思える。
《追記》
アメリカ共和党と民主党の政策差をひとことでまとめてみると次のようになる。
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